NT-CVX 250b-10H戦略

クオンツ構築

1. 戦略の概要

NT-CVX 250b-10Hは、「ミニ日経225先物」と「ミニTOPIX先物」の価格差(スプレッド)が縮小するタイミングを狙う戦略です。

この2つの指数は日本株の代表的な指標で、構成銘柄の違いから一時的に価格差が広がることがありますが、長期的には高い相関(過去データでは相関係数+0.97以上)を示しています。

相関係数とは、2つのデータの動きの類似度を示す指標で、-1~+1の間の値をとり、+1に近いほど同じ方向に動くことを意味します。

この戦略は「スプレッドが広がりすぎた後は、元に戻る(縮小する)傾向」を利用し、縮小する確率が高いと判断されたときにエントリーする仕組みです。

また、両銘柄を同時に売買することで市場全体の急騰・急落の影響を抑えるヘッジ効果もあり、相場の方向性に依存しない戦略になっております。


2. 戦略のロジック

項目内容・説明
学習方式過去250営業日を使ったローリング学習(※バックテストでは毎日更新、実運用では1か月ごとに再学習)
モデルXGBoost(二値分類)
→ 機械学習の一種で「ある事象が起こる確率」を予測する手法
目的変数10営業日後のスプレッドが現在より縮小しているか(1または0)
予測内容翌営業日にスプレッドが縮小する確率
エントリー条件予測確率が70%以上であればエントリー
イグジット条件エントリーから10営業日後に自動決済(固定保有期間)
損益評価エントリー日のスプレッド − イグジット日のスプレッド(金額ベース)
取引単位ミニ日経225先物×1枚、ミニTOPIX先物×1枚
スプレッド計算(ミニ日経225先物の価格 × 100) −(ミニTOPIX先物の価格 × 1000)

※保有期間を10営業日とする理由:

  • 短すぎるとスプレッドが縮小する前に手仕舞いとなり利益が得られにくくなる
  • 長すぎるとスプレッドがさらに拡大し損失が膨らむ可能性がある
  • 3〜15日で最適化テストを行った結果、10営業日が最も好成績だったため採用

3. 使用しているデータ

  • ミニ日経225先物(OHLC)
  • ミニTOPIX先物(OHLC)
  • 為替:USDJPY(ドル円)
  • 外部環境データ:
    • 米国株指数(ダウ、ナスダック、S&P500)
    • ボラティリティ指標(VIX、日経VI)
    • 日米の長短金利(10年・5年・2年の国債利回り)

これらのデータから、戦略で使用する15個の特徴量(ファクター)を算出します。


4. 使用している特徴量(ファクター)

  • スプレッドの1日・3日・5日リターン
  • 移動平均との乖離率(5日)
  • 移動平均の傾き(slope)
  • 標準偏差(5日・10日)
  • ボラティリティ(ATR)
  • RSI(相対力指数)、モメンタム
  • MACDとそのヒストグラム
  • 日経225とTOPIXのリターン差
  • 為替の変動要因(ドル円)
  • ろうそく足の構造・Zスコア指標

5. バックテストと信頼性検証

バックテスト結果

指標数値
トレード件数827件
勝率81.98%
プロフィットファクター(PF)8.87
ペイオフレシオ1.95
最大ドローダウン347,250円
最大DD期間9営業日
平均シャープレシオ0.676
平均カルマーレシオ23.49

年別パフォーマンス

年度回数PF勝率総損益最大DD
2016415.7076.83%+909,500円112,500円
2017754.0977.65%+587,250円104,000円
20186914.7181.58%+1,570,250円83,500円
2019584.4977.03%+630,500円96,750円
2020568.3473.68%+1,771,500円102,000円
20211026.4783.02%+3,166,500円110,250円
20221108.6180.87%+3,427,750円95,250円
2023995.5580.21%+2,160,000円104,500円
20241059.1476.29%+4,746,750円93,750円
202510290.8387.18%+2,717,500円64,000円

シャッフルテスト(信頼性検証)

  • データをランダムに並べて100回検証(ローリング学習方式)
  • Zスコア検定で「偶然ではない実力」を統計的に確認
指標数値
実PF8.87
シャッフル平均PF0.92
標準偏差0.10
Zスコア79.5(※1.65以上で有意)

Zスコアとは?
標準偏差の何倍だけ離れているかを示す指標。
8.87(実PF)は0.92(平均PF)から極めて大きく離れており、偶然ではなく「有意な差」として統計的に認定されます。


7. この戦略に伴うリスク

  • 想定外の相関崩れ
    → 日経225とTOPIXの相関が一時的に低下した場合、スプレッドが思惑通りに縮小せず損失が出る可能性があります。
  • 突発的な外部ショック
    → 為替や米国市場の急変動によって、スプレッドが拡大・変動しやすくなる局面があります。
  • 保有期間中の逆行リスク
    → 保有期間中にスプレッドが想定外の方向へ進んだ場合、損失が発生する可能性があります(ただし保有期間は最大10営業日でリスク管理済み)。
  • モデルの陳腐化
    → 市場構造の変化により、過去に有効だったファクターが将来も通用するとは限らないため、定期的なモデル再学習が必要です。
  • 約定リスクや流動性
    → ミニ先物市場は通常流動性が高いですが、祝日前後やイベント時に流動性が薄れる場合があります。

8. この戦略の特徴と強み

  • 相場が上昇・下落どちらでも利益が狙えるマーケットニュートラル戦略
  • 高相関の2銘柄を組み合わせたリスク低減型アプローチ
  • 高勝率&高PF(PF=8.87、勝率=81.98%)
  • ローリング学習と機械学習モデルによる精度の高い予測
  • シャッフルテスト・Zスコアなど多層的な信頼性検証済み
  • ファクター15種の統計的選定で説明力の高いモデル構築
  • 保有日数・エントリー確率の最適化済み(10営業日/70%)

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