はじめに
まず最初にお伝えしたいのは、この記事は「クオンツって難しそう…」と思っている初心者の方に向けて書いています。
もし途中でわからない部分があっても心配いりません。
ここではクオンツモデル構築の全体像をざっとつかむことが目的です。
各ステップの詳しい内容は、今後のブログで1つずつ丁寧に深掘りしていきますので、まずは流れをイメージするだけでOKです。
STEP 0:アイディアと仮説の定義
まず大切なのは、「なぜその戦略が機能するのか?」という仮説を立てること。
ここが最も見落とされがちですが、プロの世界では仮説なきモデルは採用されません。
例:日経平均とTOPIXのスプレッドには裁定機会があり、USDJPYや日経VIの変動が影響しているのでは?
このような仮説を出発点として、モデル全体の設計が始まります。
STEP 1:データの収集とクリーニング
仮説を検証するには、正確なデータが不可欠です。
以下のような処理が重要です:
- 日付や時間の整合性
- 欠損値(NaN)の除去
- 株式分割や指数調整の補正
- 市場中断時のデータ検証
データの信頼性が低いと、どんなモデルも正しく機能しません。
STEP 2:特徴量(ファクター)の設計
モデルに使う説明変数(特徴量)を設計します。分類の一例:
- テクニカル指標(例:RSI、MACD、移動平均)
- ファンダメンタル指標(例:PER、PBR、ROE)
- 相対指標(例:日経 vs TOPIX)
- 外部環境(例:為替、VIXなど)
時間軸も「5分」「日足」「週足」など複数を使うと精度が上がります。
STEP 3:情報漏洩(リーク)のチェック
未来のデータをモデルが“こっそり使っていないか”を厳密にチェックします。
ローリング方式(学習期間をスライドしながら検証)などを用い、時系列の順序を守った評価が不可欠です。
STEP 4:特徴量の単体検証
各特徴量が有効かどうかをチェックします。
以下の方法で評価します:
- IC(Information Coefficient)で相関の強さを測る
- Q1〜Q5に分けてロングショートのパフォーマンスを比較
- ICの推移で安定性を確認
STEP 5:モデルの選定
ここでようやく「モデル選び」です。
- XGBoostやLightGBMなどの機械学習
- ゾーン型(条件ごとの分岐)
- シンプルなZスコア型戦略など
また、「ベースライン(単純戦略)」と比べてどれだけ改善しているかも重要な視点です。


STEP 6:バックテストの実施
構築したモデルを過去データで検証します。
ローリング学習や週次リバランスを使って、実運用に近い形でテストしましょう。
全期間まとめて検証するだけでは、結果が過大評価されてしまうことがあります。
STEP 7:信頼性テスト(モデルの健全性確認)
モデルの実力を測るためのテストです:
- シャッフルテスト:ターゲットをランダムにして検証
- ウォークフォワードテスト:未来の値を逐次予測
- ランダムターゲットとの比較
- ゼロインジケーターテスト(特徴量なしとの比較)
STEP 8:戦略の最適化
- 保有日数の調整(例:3日、5日、10日)
- 利確・損切りの設計
- エントリー条件の閾値(例:70%以上でエントリー)
これらを過剰最適化にならない範囲でチューニングします。
※ウォークフォワードでの最適化が推奨されます。
STEP 9:ポートフォリオ統合
複数戦略がある場合は、リスク分散・相関の低減が重要です。
プロの運用では「個別戦略の成績」より「ポートフォリオ全体の安定性」が評価されます。
STEP 10:システム実装と検証
モデルを実際に使うためのインフラ構築も必要です。
- API連携や自動売買の構成
- エラー時の安全処理(フェールセーフ)
- ログ記録やレイテンシテストなどの品質管理
STEP 11:実運用とモニタリング
実際に運用を始めた後も、継続的な評価と改善が重要です。
- 勝率
- プロフィットファクター(PF)
- シャープレシオ
- 最大ドローダウン
- 月次損益・取引件数など
これらをKPIとして定例分析し、戦略を維持・進化させます。
まとめ
クオンツモデル構築は「単なる予測モデル」ではなく、
仮説 → 検証 → 実装 → 実運用までを一貫して行う総合的な戦略構築です。
この11ステップを理解し、実践すれば、あなたも本格的なクオンツ戦略の世界に足を踏み入れることができます。
次回は、それぞれのステップを1つずつ深掘りしていきますので、お楽しみに!
