【特徴量の作り方と考え方 】その5:特殊系・複合系特徴量

クオンツ構築

モメンタムやボラティリティなど、伝統的なカテゴリを越えて設計された特徴量を「特殊系」や「複合系」とモメンタムやボラティリティなど、伝統的なカテゴリを越えて設計された特徴量を「特殊系」や「複合系」と呼びます。これらは複数の指標や指標構造の“掛け合わせ”によって作られ、より高度な戦略に組み込まれます。単独の指標よりも複合的な視点で市場を捉えることが当たり前になっており、特徴量の工夫が戦略の精度を大きく左右します。


✅ 複合系特徴量とは?

複数の指標を組み合わせて、単一のスコアに変換したものです。以下に代表例を紹介します:

▶ リターン ÷ ヒストリカル・ボラティリティ(HV)
価格の変化(リターン)を、その銘柄の“標準的な動き”で割ります。

  • A銘柄:1日リターン = 2%、HV20 = 1% → スコア = 2.0
  • B銘柄:1日リターン = 2%、HV20 = 4% → スコア = 0.5

▶ RSI ÷ ATR
RSI(モメンタム)を、ATR(値動き幅)で調整。

  • RSI=70、ATR=2.0 → スコア=35
  • RSI=50、ATR=1.0 → スコア=50(効率のよい上昇を示唆)

▶ MACD の活用(複合形式)

  • MACD ÷ ATR:静かな中での強いトレンド
  • MACD × HV:トレンドと環境の勢いを同時に評価

📌 例:

  • MACDが上昇かつHVが縮小 → 安定したトレンド
  • MACD ÷ ATR が上昇中 → 効率的なトレンド継続

✅ 他の複合系特徴量

▶ 終値 ÷ HV
価格水準をボラティリティで割ることで“相対的な高値圏”を可視化。

  • 終値 = 20,000円、HV20 = 200円 → スコア = 100
  • 終値 = 1,500円、HV20 = 100円 → スコア = 15

▶ 実体幅 ÷ ATR
その日の実体ローソク足をATRで割る。

  • 実体幅 = 150円、ATR = 100円 → スコア = 1.5

▶ ギャップ ÷ ATR
寄付きギャップの“異常性”を評価。

  • ギャップ = +80円、ATR = 40円 → スコア = 2.0

▶ リターン ÷ 出来高Zスコア
値動きに対する出来高の“裏付け強度”を測る。

  • リターン = +3%、出来高Z = 2.0 → スコア = 1.5

▶ 移動平均乖離 ÷ HV
乖離幅を標準偏差で補正し、トレンドの“強さと異常性”を定量化。

  • 終値 = 12,000円、20MA = 11,500円、HV = 250円 → スコア = 2.0

✅ 特殊系の工夫例

▶ 陰線率 × 実体比率
過去の陰線頻度と実体の強さを掛け合わせて、下げの質を評価。

  • 20日中12日陰線(60%)、平均実体比率=0.4 → スコア = 0.24

▶ 連動性スコア
銘柄AとBが同方向に動いた日数割合。

  • リターンが同日ともプラスの日数割合 → セクター内連動度を測る

✅ 活用方法

  • Zスコアで正規化してから複合化する
  • スコアの閾値を条件にトレード(例:1.5以上のみ)
  • 情報係数(IC)でファクターの信頼度を定量評価

📌 判定例:

  • 「RSI ÷ ATR」が高い → 値幅の狭い力強い上昇
  • 「終値 ÷ HV」が高い → 安定環境下での過熱感あり
  • 「MACDが上昇 × HVが縮小」→ 信頼性のある上昇トレンド

✅ まとめ

特殊系・複合系特徴量は、単なる数値の掛け算ではなく「背景に意味のある組み合わせ」によって、裁量では見逃されがちな相場の構造を浮かび上がらせる重要な道具です。

次回は、「時間系・外部要因ファクター」について解説します。

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