【特徴量の作り方と考え方 】その4:ろうそく足の構造系特徴量

クオンツ構築

トレードにおける“ろうそく足”は、単なる価格の記録ではなく、市場参加者の心理や需給の変化が視覚的に現れた重要な情報源です。特にクオンツ分析では、ろうそく足の「形」や「比率」などを数値化することで、有効な特徴量として活用されます。この記事では、ろうそく足の構造系特徴量について深掘りしていきます。


✅ ろうそく足の基本構造をおさらい

1本のろうそく足には、以下の4つの値があります:

  • 始値(Open)
  • 高値(High)
  • 安値(Low)
  • 終値(Close)

この4つから、以下のような構造的特徴を数値として抽出できます:


✅ 基本的な構造系特徴量

▶ 実体(Body)とヒゲ(Shadow)の比率

  • 実体幅 = 終値 − 始値(またはその絶対値)
  • 上ヒゲ = 高値 − max(始値, 終値)
  • 下ヒゲ = min(始値, 終値) − 安値

これらを全体のレンジ(高値 − 安値)で割ることで、構造的な特徴を正規化して比較可能にします。

例:

上ヒゲ比率 = 上ヒゲ ÷(高値 − 安値)
下ヒゲ比率 = 下ヒゲ ÷(高値 − 安値)
実体比率 = 実体 ÷(高値 − 安値)

📌 具体例:始値=100、終値=105、高値=110、安値=95 の場合

  • 実体 = 105−100 = 5
  • 上ヒゲ = 110−105 = 5
  • 下ヒゲ = 100−95 = 5
  • レンジ = 110−95 = 15
  • 実体比率 = 5 ÷ 15 ≒ 0.33(全体の3分の1が実体)
  • 上ヒゲ比率 = 5 ÷ 15 ≒ 0.33
  • 下ヒゲ比率 = 5 ÷ 15 ≒ 0.33

ヒゲが長く実体が短い足は「迷い」「反転サイン」とされるケースもあります。

▶ 陽線・陰線の有無

  • 終値 > 始値 → 陽線(買いが優勢)
  • 終値 < 始値 → 陰線(売りが優勢)

これを連続数や割合にして特徴量化することもあります。


✅ 応用的なろうそく足構造特徴量

▶ ヒゲの非対称性

  • 上ヒゲ − 下ヒゲの差や、上ヒゲ/下ヒゲの比率
  • 上下どちらかに偏ったヒゲは“攻防の結果”を示す重要なサイン
  • 例:「長い上ヒゲ+陽線」は天井警戒、「長い下ヒゲ+陰線」は反発警戒など

📌 具体例:上ヒゲ=8、下ヒゲ=2 → 上下比率 = 8 ÷ 2 = 4(上ヒゲが4倍長い)

▶ ボディセンター vs 高値安値の位置

  • 実体の中心 = (始値 + 終値) / 2 が高値・安値のどのあたりに位置するか
  • これは、買いと売りのバランスを評価するプロ的な視点

📌 具体例:始値=120、終値=110、高値=125、安値=100

  • 実体の中心 = (120+110)/2 = 115
  • レンジ内での位置 = (115−100)/(125−100) = 15/25 = 0.6(上寄り)

▶ ヒゲの出現頻度・形状パターン

  • 一定期間に「ピンバー(上ヒゲ・下ヒゲが極端に長い)」が何本あるか
  • 上ヒゲと下ヒゲの発生回数の比などから、“市場の押し戻し傾向”を評価

🔍 活用方法

📌 パターンフィルターとしての利用

  • 「ギャップアップ後の長い上ヒゲ」→失速を疑う
  • 「連続陽線で実体が伸びる」→モメンタムの勢いが続いている

📌 イベント後の反応評価

  • 指標発表などの“材料直後”のローソク足に注目し、「下ヒゲ陽線」→押し目買いの反応、「上ヒゲ陰線」→出尽くし売りを示唆

📌 AI・クオンツでも使用

  • ローソク足構造は視覚的だが、数値化すれば機械学習でも扱える
  • 「ヒゲ比率 × 実体比率」「実体×前日のリターン」など、他要素と組み合わせた複合特徴量も多用される

✅ より高度な構造分析

▶ ローソク足の連続性(パターン検出)

  • 3本連続陽線/陰線、包み足(エンゴルフィング)などの連続パターンを数値化
  • 過去n本のうち「陽線率」や「実体が大きい足の割合」などを使い、市場の一貫性を評価

📌 具体例:過去5本の足のうち、陽線が3本 → 陽線率 = 3 ÷ 5 = 0.6

▶ 平均実体比率・平均ヒゲ比率(期間ベース)

  • 過去5日や20日の平均を取って、「今の足は異常か」を判定
  • 短期イベント時の“足の異常さ”を浮かび上がらせる目的でも利用

✅ まとめ

ろうそく足の構造は「単なる形」ではなく、売買の攻防の結果を定量化できる貴重な素材です。特に、クオンツの世界では、ろうそく足を数値的に分解し、「パターン検出」「強弱の可視化」「異常性の評価」などに活用しています。

視覚的なヒントを数値に落とし込むことで、裁量トレーダーの勘や経験を、機械学習モデルでも再現可能にするのがこの領域の魅力です。

次回は「特殊系・複合系特徴量」について解説していきます。

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