【特徴量の作り方と考え方 】その8:フィルター型特徴量

クオンツ構築

トレード戦略において、「どの場面で勝負するか」を判断するのが“フィルター型特徴量”です。これは、エントリーの“質”を高めるために使われるもので、単体で売買を決めるのではなく、他のロジックと組み合わせて「今はやるべきか、やらざるべきか」を判定する役割を担います。


⭐ フィルター型特徴量とは?

トレンドの有無、ボラティリティの高さ、過熱感、ニュースイベントの有無など、“市場の状態”や“戦いやすい地合いか”を数値で判定する特徴量です。

▶ 目的は「戦略の条件付け」

  • 本来の売買ロジックに「条件をかける」ことで、勝率やPFを改善
  • 例:RSI戦略に「トレンドが発生している時だけ実行」のフィルターをつける

⭐ 代表的なフィルターの例と活用法

① トレンドフィルター(移動平均)

  • 例:価格が25日移動平均を上回っているか?
  • 解釈:上昇トレンド中かどうかを判定

✅ 実例:

  • 価格 = 10500円、25MA = 10300円 → フィルターON(買い条件)
  • 価格 = 10100円、25MA = 10300円 → フィルターOFF(スルー)

② ボラティリティフィルター(ATR・HV)

  • 一定以上の値動きがあるかどうかを判定
  • 低ボラでは戦略をスルー、高ボラ時だけ実行

✅ 実例:

  • 20日ATR = 250円以上 → トレード可能
  • 20日ATR = 100円 → トレード回避

③ 時間・イベント系フィルター

  • 曜日や時間帯、経済指標発表前後などでON/OFF
  • 例:月曜の寄り付き後はトレードを避ける、FOMC当日は休む

④ Zスコアによる極値回避

  • 価格やスコアが極端に偏っているときはスルー
  • 過熱・過小評価を避けるリスク管理として

✅ 実例:

  • RSIのZスコアが +2.5 → フィルターOFF(過熱状態)
  • Zスコアが ±1.0 未満 → フィルターON(平常ゾーン)

⭐ フィルターの複合活用:例と解説

複数フィルターを「AND条件」で組み合わせることが、実務では一般的です。

✅ フィルター複合例:

  • 【価格 > 25MA】 AND 【ATR > 200】 AND 【Zスコア < ±1.5】

この条件を満たした場合だけ、RSIなどの戦略ロジックを実行。

📊 実験:

  • フィルターなし:勝率 48%、PF 1.2
  • フィルターあり:勝率 58%、PF 1.7(明確に向上)

⭐ 注意点:フィルターは“万能”ではない

  • 過剰フィルターで機会損失になることもある
  • 組み合わせはバックテストとIC検証で慎重に設計

⭐ まとめ

フィルター型特徴量は「地合いが良いときだけ戦う」ための強力な武器です。 その効果は劇的で、同じ戦略でもフィルターの有無でパフォーマンスが大きく変わります。

「今はやらない方がいい」という判断も戦略の一部——。 勝つために“戦わない勇気”を持たせてくれるのが、フィルター型特徴量の真価です。

次回は「Zスコア・標準化系特徴量」について解説します。

タイトルとURLをコピーしました