【特徴量の作り方と考え方 】その6:時間系・外部要因ファクター

クオンツ構築

特徴量設計では、「価格」や「リターン」などのチャート由来のデータだけでなく、「時間」や「外部環境」そのものを変数として取り込むことが、クオンツでは常識です。
これは人間が無意識に意識している「時間のクセ」や、「市場全体に影響する大きな力(ファンダメンタルズ要因)」をデータとして可視化する試みでもあります。


✅ 時間系特徴量とは?

時間帯や曜日、月など、相場のリズムを捉える特徴量です。

▶ 時間帯(例:寄付き直後かどうか)

  • 8:45〜9:00、13:00直後など、出来高やボラティリティが増える時間帯に着目
  • 特定の時間帯は「トレンドが出やすい」「逆張りが効きやすい」などの傾向がある

📌 活用例:

  • 「9:00台で陽線率が高い」→ その時間帯にロング優位
  • 「14:30以降は上昇の勢いが減退する」→ イグジットタイミングに使える

▶ 曜日・週末効果

  • 金曜日にかけて利益確定が出やすい、月曜は反発しやすいなどのパターン
  • 特に短期売買では曜日によるボラティリティやリスク感応度が変化する

📌 活用例:

  • 「金曜は陰線率が高い」→ ショート戦略と相性が良い曜日
  • 「水曜日は平均値幅が最も大きい」→ 値幅狙いのトレードに向いている

▶ 月初・月末

  • ファンドのリバランスや機関投資家の動きが集中するタイミング
  • 月末は利食いが出やすく、月初は新規資金が入りやすい傾向

✅ 外部要因ファクターとは?

為替、金利、先物指数、商品価格(WTI、金など)など、「対象銘柄とは異なるが影響を及ぼす可能性がある要因」を特徴量として組み込むことです。

▶ 例:USD/JPY(ドル円)

  • 日本株や先物との連動が強く、「円安=日経上昇」「円高=TOPIX優位」などの力関係が表れる
  • ドル円が大きく動いた翌日は相場全体の流れも変わる可能性

▶ 例:VIX(日経VIやVIX指数)

  • ボラティリティインデックス(恐怖指数)。上昇すると市場はリスクオフ傾向
  • VIXが上昇しているときは、トレンド戦略より逆張りが機能しやすいこともある

📌 活用例:

  • 「ドル円上昇 × 日経先物上昇」→ 連動性強化シグナル
  • 「VIX急騰 × 陰線連続」→ 過度なリスク回避局面での反発狙い

✅ 注意点:未来リークに注意!

外部データを特徴量に取り込む場合、「未来データをうっかり使ってしまう」リスクが高くなります。たとえば:

  • NYダウ終値を、日経先物の寄付き予測に使ってしまう
     → ダウは日本時間の早朝に確定するため、実際には寄付き時には分からない情報

「その時点で観測可能だったか?」という因果関係の正しさに常に注意しています。
時間系データも同様で、「結果が出る前に、その時間かどうか分かっていたか?」を意識する必要があります。


✅ 使い方と工夫

  • 時間帯×外部要因の組み合わせ(例:朝のドル円変動幅 × 9:00台の値動き)
  • 曜日フィルターで戦略を絞る(例:木・金だけロングする)
  • Zスコア標準化した外部データを使ってトレンド判定

また、外部要因ファクターはそれ単体で使うだけでなく、「モメンタム系やボラティリティ系との複合」で機能しやすくなります。
たとえば:

  • RSI × ドル円変化率 → 「勢いのある銘柄が為替環境と一致しているか」
  • リターン ÷ VIX変化率 → 「恐怖環境下でどれだけ効率的に上昇しているか」

✅ まとめ

時間系・外部要因ファクターは、一見すると価格とは無関係に見えますが、相場の「文脈」や「地合い」を捉えるための鍵となる特徴量です。

特に短期トレードや先物戦略では、時間のリズムとマクロ的な影響を無視すると、モデルが空回りする原因にもなります。
今後の複合戦略やフィルター設計において、これらの特徴量は欠かせない要素となるでしょう。


次回は「相関・統計系特徴量」について詳しく解説します。

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